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『ナック・バラットの倒し方』 by 双六屋カゲゾウ
 
 
前々からバックギャモンプレイヤーはジンクスを気にするのかと疑問を持っていまし た。自分の場合だとジンクスを担がないことをジンクスとしています。(結局担いで いるわけですが)というのはある種パターンを持っているとそれを破ったときに 「あ、やばい!」と精神的な綻びを作ってしまうと嫌だからです。

などいいつつも勝っているときは試合中に飲んでいるドリンクは同じ銘柄を買いつづ けたり、トイレのドアを開ける手は毎回同じ手にしてみたりと無意識のうちにいくつ かパターンを作ってしまいいつの間にかジンクスにガンジガラメになっている自分が いたりします。やれやれ・・・

ゲームの技術以前のこんなことで悩んでいては一向に強くなれないと毎回反省しき り。とまあだからこそエキスパートはこのへんどうなのかということが知りたかった わけです。困ったときのご意見番、我らがシモヘイ会長に疑問をぶつけたところ一流 スポーツ選手や将棋・囲碁の棋士でさえ縁起担いでいるという例は枚挙に暇がないの に、ましてや運30%とラックの配分が少なくないギャモンにおてい「ないはずがな い」というお答えに少しほっとしました。その一例としてバックギャモン界のビッグ ネーム、ナック・バラット(Nack Ballard)の縁起担ぎを教えてもらいました。
『ナック・バラットの倒し方』 by 双六屋カゲゾウナックといえば3本の指に入る世界最強プレイヤーの一人。思い出すのは表情、姿勢、 振り出方などゲームを通じてほとんど変化しないバックギャモンマシーンかのような 沈着冷静なプレイスタイルです。

ゲームに臨んでは機械のような彼がそんなことを気にするのかと思いきや「ナックは いつもバックギャモンボード持ってるでしょ?」と会長。あ、そうえいば!このとき 脳裏には2000年のバックギャモンフェスティバルで行われた最上ワールドチャレ ンジ(以下MWC略)の決勝での場面が蘇りました。

MWCは国内外8名のトッププレイヤーが優勝賞金120万円を争う頂点の戦い。こ のファイナルには名古屋の強豪長谷川氏がナック・バラットを破り優勝という日本 バックギャモン史上に残る歴史的な1日となりました。

しかしこの試合開始直前、水面下ではある戦いが繰り広げられていたのです。決勝を 前にシモヘイ会長へナックから申し入れがあったそうです。その要求とは「自分の ボードで決勝を戦いたい」と。しかし会長は言下に「NO!」なぜなら・・・

JBLの公式ボードは赤坂の名店、最上からの提供でありボード中央には「MOGA MI」のネーム入り。決勝戦はボードを真上から俯瞰したカメラを据え付けて別室の モニターにて大勢の観客が見守ります。なによりもこの最上カップこそスポンサーは 最上であり別のボードを使うことなどもってのほかです。

それでも断固として自分のボードに固執するナック。しかしスポンサーの意向とあっ てしぶしぶ彼が示した妥協案は「チェッカーだけは自分のものを使わせてもらう」と いうものでした。

思い返せば決勝において確かにチェッカーは黄色と黒であったので少し奇異に感じた のを憶えています(MOGAMIボードでは赤と青)まあ、カメラ栄えを考えて チェッカーを換えたのかなくらいに思っていたのですが、背景にはナックのジンクス に対する執念があったわけです。しかも結果は彼が恐れていたとおりのもの。

もちろん優勝は長谷川氏が実力で討ち取ったわけでありマイボードでなければナック が弱いということではありません(事実GGでは常にトップ10に入っている)一流 プレイヤーといえども縁起を担ぐという証左になるとおもいます。

強豪プレイヤーといえどもジンクスから逃れられられないという見方もあるでしょう が、たとえ非科学的であってもネガティブナ要因は寸毫も許さないというこの徹底し た姿勢こそナックの強さの秘密の一端ではないかと僕は考えます。〈終〉